投資の世界ではリスクとは「危険・損」ではなく、投資資金の将来損益の振れ(変動)幅をいいます。
したがって、「リスクが大きい」とは、上=プラス(利益)にも、下=マイナス(損失)にも変動する可能性が高く、「リスクが小さい」とは、変動の可能性が低いことを指します。それに対して、リターンとは、「収益・もうけ」を表し、上に変動することで得られます。通常、リスクが大きいとリターンも大きく、リスクが小さいとリターンも小さくなります。
せっかく不動産屋のブログなのでマンション経営のリスクについて考えて見ます。
あるマンションが表面利回り6%で満室だとします。これをAとします。
もう一つのマンションが満室時想定利回りで24%で、でも今は20%しか埋まっていないとします。これをBとします。
この時点の金利を2%ととし、固定資産税を売買価格の1%とします。
管理費と物価上昇率を無視して考えます。
(固定資産税は評価額の1.4%ですが、減価償却と実質売価との差を考慮して通期1%とします。管理費は収益の5%ほどが目安になりますが、利回り計算上は収益が1に対して0.05になるので誤差の範囲です)
まず、マンションAが簡単なのでこちらで練習しましょう。
表面利回りは(年間収益÷売買価格)で計算します。
マンションAの固定コストは固定資産税の1%と金利の2%です。
これらはすべて収益に対しての比率で求めます。
したがって、表面利回り6%を実質利回りに換算するには
(年間収益÷売買価格)−(0.01+0.02)
となります。
年間収益÷売買価格はすでに6%とわかっていますから
0.06−(0.02+0.01)
となりますね。結局、0.03となります。答えは実質利回り3%です。
ここで、価格や収益がわからなくても、実質利回りが計算できることにご注目ください。式として単純化できるということは、価格の違うマンションでも比較ができることをあらわしています。
年利3%これがおおよその実質利回りです。
ところで、金利は変動しますよね?
一般的に金利の平均は4%に収束するといわれています。
すると・・・0.06−(0.01+0.04)=0.01(実質利回り1%)
さて、金利変動を見込んだのですべてのリスク計算はできたと言えますか?
言えません。
最初に言ったとおり、リスクとは投資資金の利益の揺れ幅です。
コストの変動は金利で表現しましたが、利益の変動はどのように計算したらいいでしょうか?
例えばこのマンションがローン満期までの期間の平均の入居率を80%とします。
それは、100%のときもあれば60%のときもある、平均すると80%であると考えます。
まさに収益の幅のリスクとは、このときの60%のことなんですね。
もしも50%になる可能性もある、と考慮すると、平均は75%になるはずです。
したがって、75%で償還期間全体の利回り平均を出すとすると、
(年間収益×0.75)÷売買価格−(0.01+0.04)
ですから、表面利回りが6%ならば
0.06×0.75−(0.01+0.04)
=−0.005
となります。0.5%のマイナスです。
ところで最悪の場合は50%を覚悟しなければならないので
0.06×0.5=0.03
コストを差し引いてマイナス0.02ということになります。
最悪の時期のマイナス2%を乗り切るだけの貯蓄を儲かっている間にしてください、そして、マイナス0.5%の平均利回りを期待してください、ということになります。
表面利回り6%がおおよそ、損益分岐点になる、というのはこういうことです。
したがって表面利回り8%が投資判断の分かれ目になるのです。
途中でリフォームして入居率を高めに維持する場合の考え方は次を参考にしてください。
さて、それではマンションBです。
満室時想定利回りで24%で20%しか埋まっていないので、現在の実質表面利回りは4.8%にしかなりません。これでは話になりませんね。当然リフォームを考えなければなりません。例えば売買価格の20%ほどのリフォームによって入居率を通期平均75%にすることを考えてみましょう。
まず最初の式からスタートします。 金利は2%です。
(年間収益÷(売買価格+(売買価格×0.2)))−(0.01+0.02)
年間収益÷(売買価格+(売買価格×0.2))の式を変形すると
年間収益÷(売買価格×(1+0.2))さらに括弧をはずして変形すると
年間収益÷売買価格÷1.2となりますから表面利回りが0.24ならば
(0.24÷1.2)−(0.01+0.02)ですね。
0.24÷1.2この部分を単純化して理解することが重要です。
リフォーム代は0.2なんです。それに1を足して表面利回りを割るんです。
違和感があっても、このまんま覚えてしまってください。
そして答えは0.2−(0.01+0.02)=0.17ですね。年利17%です。
仮に金利が4%ならば
0.2−(0.01+0.04)ですから0.15です。年利15%です。
さらに入居率は75%想定でしたね。
0.2×0.75−(0.01+0.04)ですから、0.1です。年利10%です。
最悪の場合を想定して入居率が50%になった場合です。
0.2×0.5−(0.01+0.04)ですから、0.05です。
最悪の場合ですら5%の年間利回りがある、ということです。
いかがでしたか?
日ごろ感じるリスクと実際のリスクのギャップがどれほどかわかります?
ところで、わたしならマンションBがリフォーム後満室になった時点で
0.24÷1.2=2.0で表面利回り20%のマンションを表面利回り10%で売却します。
さきほど8%が投資判断の分かれ目でしたから10%なら売れますよね。
年間収益÷(売買価格+リフォーム代)=0.2のマンションをを0.1にするわけですから投資額が2倍になって戻ってくるということです。
とすると、年利200%の超高利となります。
売ったとたんに利益が確定してリスクが0になるんですから当然です。